2月コラム

http://msp.c.yimg.jp/yjimage?q=y8enAw8XyLEltftdqSAWwqF23s98EBF.CvrajKUcmrNSKFoDmLE3JgZjbHlbiV6_PKMt1dmV7_.oFK7tvqWjoMrlunAhji4V3PvHaMGckEGPY_fLo3VphxmyacXrS7Ny71E-&sig=12tq8msf2&x=122&y=170豊田泰光のコラム「チェンジアップ」が終了

S40年卒 門田睦雄 

毎週木曜日は、日経新聞スポーツ欄のコラム・「チェンジアップ」が楽しみだった。私の少年時代に、ジャイアンツを相手に日本シリーズを3連覇し、しかもその最終年は3連敗の後の4連勝という離れ業をやってのけた西鉄ライオンズ、その主力選手であった豊田泰光氏によるコラムで、もう足かけ16年も続く長期連載だった。これだけ続くということは、さぞ読者も多かったのだろう。野球界の題材を取り上げながらも、人間の生き方や、時の社会問題に敷衍する辛口の指摘には、私も同感することが多かった。紹介するエピソードは、自ずと西鉄ライオンズ時代のことが大半であったが、それが私の少年期と重なっているだけに、当時の記憶を甦らせるものでもあった。http://msp.c.yimg.jp/yjimage?q=WZBnZccXyLGJowcPOqQmXlMPYKpqec6H8mQ_CUWbYfOa.m1CfnO5XftHjXa3zo4OhFTbgSYlh8i_uPxSmTshIfpckvN5uTfG1RORYiMbX3y8bLz7dWAuzCT_lS13cVPs&sig=12restl0r&x=170&y=127

 このコラムで、彼が日本のプロ野球に対して、繰り返し主張してきたことが二つあった。一つは「飛びすぎるボールを止めて、世界標準のボールにしろ」だった。日本のプロ野球の中だけでホームランの数や高打率を誇っても、国際試合では通用しないこと、言うならグローバル化の時代に国内事情にこだわりすぎると、今でいう「ガラケー」になることを予言していた。また私の感想だが、飛びすぎるボールを使うのは、「ホームランがたくさん出て、点が入る試合を一般観衆は喜ぶ」という、経営者の野球ファンを軽く見た、皮相な解釈があったのではないだろうか。こんな経営者の考えの下で、ふらふらっと上がったフライがホームランになるような試合を、永い間見させられてきた観衆は不幸だった。世論の盛り上がりもあり、プロ野球は一昨年飛ばないボールを採用したが、再び揺り戻しがあって、コミッショナーが辞任したりという経緯があった。しかし飛びすぎるボールの弊害は広く認識されたことだろう。http://msp.c.yimg.jp/yjimage?q=hQ7kdwEXyLEez8JzGVzAafqkiWY0avdY2u6a9V9auL952umO59otkc5zbD6LXav4XyhnixIGPBdlii_i0M8KpDWOyMKNxU11r3odDNh77.6clFZxNsp.k8ns.aaHmkct5r4-&sig=12tuk4ce2&x=104&y=139

 もう一つは「クライマックスシリーズのような、目の前の利益に惑わされた運営はやめろ」だった。「130試合もの長丁場を勝ち抜いたところに、3位の球団が短期決戦で勝利しても、それは本当の勝者ではない。長期的に見れば日々行われるペナントレースの価値をおとしめる行為だ」という指摘は、至極もっともだと感じる。現在のクライマックスシリーズを経た日本シリーズも、ほんのエキシビジョンで、勝者を「日本一」と呼ぶのはふさわしくないと感じる。本来の日本シリーズの後に、日韓中台によるアジアシリーズを本格的にやることを考えるのがまともな方向だと思うのだが。 

 更に彼には「騒がす、選手の一投一打に集中するスタンド、土のにおいのする天然芝のグランド・・・」を懐かしがる一面もあった。1回からトランペットを吹き鳴らし、打球音も聞こえなくする応援や、着色ジュースのような緑色の人工芝に反感を覚える私の気持ちも同じだ。投手が投げ打者が打つ瞬間には、球場が静まり返る米国の野球と比べると、日本の野球観戦ははなはだ集中力をそがれる。 

豊田氏はその後、西鉄ライオンズからサンケイ・アトムズに移り、2009年11月09日の記事一覧|CAP専門店 ”KINGS” - 店長の部屋退団後産経新聞のスポーツ記事を書くようになった。これほどのコラムを書き続けた彼も、当初は随分苦労したそうだ。漢字を書けずに「忘れました」と同僚の記者に言ったところ、「覚えていたなら忘れるといってよいけれど、もともと覚えていないのだから、『知らない』だろう」と言われたエピソードも載っていた。こんなところからスタートして、永年継続し、多くの読者から心待ちされるコラムニストになった豊田泰光氏。当初の苦労と、それを乗り越える努力は、プロ野球選手の良い手本だろう。 

このコラム「チェンジアップ」も昨年末に最終回を迎えた。今年79歳を迎えるとなると、後輩にバトンを託そうと思うのも、やむを得ないだろう。最終回記事に載った彼の写真は、さすがに肉体的衰えを隠し切れない。これまで長年コラムで楽しませてくれた、わが西鉄ライオンズの英雄に、心からのエールを送って、この文を締めくくりたい。西本にんげん野球 番外編 豊田泰光様へ - 日々黙々 - Yahoo!ブログ

※福岡市博物館は、昨年から西鉄ライオンズの資料を常設展示しているそうです。

「チェンジアップ」の本文を読みたい方は以下を

http://www.nikkei.com/sports/npb/column/?uah=DF251020129540

 以上

inserted by FC2 system